『死ね!死ね!シネマ』レビュー「人間の恨みつらみほど怖いモノはないと痛感」

共同通信 47NEWS <花まるシネマ>にて中山治美さんによる作品レビューが掲載されました
http://www.47news.jp/topics/entertainment/2011/07/post_4160.php

『死ね!死ね!シネマ』 人間の恨みつらみほど怖いモノはないと痛感
2011年07月19日

東京島』の篠崎誠監督が、こんなにユーモア溢れる人だとは思わなかった。本作は、講師を務める映画美学校の授業で製作され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などで上映された36分の短編がベースになっている。劇場版は、その短編に追加撮影を加えた72分の長編。これが、学生のための授業というより『東京島』で賛否両論を浴びた篠崎監督の逆襲ホラー! 私的感情むき出しになっているから大笑い。

事件は、美学校の卒業制作発表会の席上で起こる。学生の作品を酷評した講師シマザキだったが、逆に客席から自身の作品をけなされて逆上し、42人を惨殺する。その4年後。当時、女子高生だったなつきは、廃墟となった美学校で究極のホラー映画作りを目指す。その狂気は、スタッフや観客たちへと蔓延していく。

スタッフもキャストも美学校の生徒たちで、つたないところは多々あれど、歪んだ映画愛の暴走や、人間の恨みつらみほど怖いモノはないと痛感させられる心理描写に唸った。篠崎監督の最高傑作と呼びたい。

ちなみに劇場は、実際に撮影が行われたオーディトリウム渋谷。恐怖倍増で、節電の夏に体感温度を下げるにも最適。★★★★★(中山治美)