『死ね!死ね!シネマ』について

■良し悪しとか好き嫌いの評価を封じてしまう、「狂っている」といってもいい“映画”へのあくなき欲望のかたまり。
松田広子(映画プロデューサー)

■色々な意味で「痛い」映画である。まず、全編にわたり刃物が人間を突き刺すアクションが痛い。しかもそれは篠崎誠監督が自らの傷の痛さを忘れるために突き刺すような、自傷行為にも似た痛さである。それで僕の心にも傷がつき、未だにダラダラと血が出ている。
想田和弘(監督『Peace』)

■自虐? シニシスム? いや、シノザキはむろんシマザキとは違う。シノザキはいつものように直球を、グローバル資本主義下の町工場的ヤケクソさで投げこんでくる。あまりにストレートすぎて現代ではまがまがしく見えるその魔球に直撃されて、人は「愛」が「呪い」の同義語であることを知るのだ。
藤井仁子(映画批評)

■行き当たりばったりの展開に翻弄されながら、ラストでは言いようのない興奮で涙が止まらなくなる。まぎれもなく“映画”としか呼べない代物。
三宅隆太(脚本家、監督『七つまでは神のうち』)

■スクリーンに映っているのはあくまでも作られた虚構であり、人間の影でしかないのだから、恐れることなどなにもない。そう高を括っていると、殺される。スクリーンの中の人物と目が合った瞬間、僕は思わず「こっちを見るな」と腰を浮かしかけた。篠崎誠監督は本気で観客を呪おうとしている。
古澤健 (監督『ANOTHER』)

■弾けるだけ弾けてしまおうとする勢いのうねりに圧倒される。場合によっては最悪の悪乗りとなりかねない題材に対し、ぎりぎりのところで映画表現に踏みとどまっている。それは、エピローグに近づくにつれ、異様なほど透明感を伴った画面の張りを獲得していったことに顕れる。
筒井武文(監督『孤独な惑星』)

■映画が人を殺すことは誰だって知っている。だが積極的に人を殺しに行く映画が作られたことはなかった!
柳下毅一郎(映画評論家)

■『死ね!死ね!シネマ』は、映画への異常な愛が歪んだ形で炸裂した"壊れた傑作"だ。それは同時に、才能あるプロの映画作家が手がけたアマチュア映画こそが最強の映画であることを雄弁に証明してくれる。
市山尚三(映画プロデューサー)

■この作品は映画に携わるすべての人にとって、決して他人事ではない悪夢です。みなさんくれぐれも映画には注意しましょう。
佐藤佐吉 (脚本家、監督『東京ゾンビ』)

■愛も称賛も得られなくとも、映画を撮るという行為こそ最も崇高なのだと知りました。
内藤瑛亮 (監督『牛乳王子』『先生を流産させる会』)

■不連続な連続が生生しく艶やか。映画によって凶気に転じた二人の人間とその遺志をつぐ人間の話だと思います。「ナイフもっと近づけて。顔なんかちょっとくらい切れてもいいんだから」このヒロインの台詞にしびれた自分に驚きました。
渡辺裕子 (監督『LIFE LINE』『愚か者は、誰だ』)

■悪夢のような映画ですね。やたら寝起きが悪く、イメージそのものが脳裏に焼き付いて離れず、居心地悪さと心地良さが同居する感覚。「観たら呪われる(シマザキ流に言えば地獄へ堕ちる)映画」が実在するならば、恐らくはこういう作品なんだと思います。
奥田真一 (監督『逆襲!スケ番ハンターズ 地獄の決闘』)

■喝入れられた。お前の映画作りはまだまだ甘いと。見終わった時、「死ね!」が愛 の言葉であることに気付いた。
藤岡晋介(監督『ブラザー』)

■劇中劇の映画監督がキレまくり叫びまくる。彼女の芝居を撮りまくるカメラ!雪のなかをただひたすら歩く彼女を追い続けるだけのショットがなぜあそこまでカッコいいのか! いやあ、なんだかわからんが面白かった!
木村立哉(映画プロデューサー、エッセイスト)

■アンタら、ウチの映画館で何つーことをしてくれてンだ!!と頭クラクラしましたけど……傑作です。
千浦僚(オーディトリウム渋谷支配人、映画感想家)

■『死ね!』と心で思ったことの無い人は頭がおかしいに決まってる。そんな健全な思いを、まさに映画によって成し遂げようとする映画……、頭がおかしくない人なら必見です。物騒だけど感動します。
大畑創(監督『大拳銃』『へんげ』)

■皆もう、映画に囚われてしまった。それが地獄へ導く装置となることを、映画を通じてしか訴えられない監督は既に人生が狂わされているし、みすみす立ち会う観客の私たちにも映画は侵食した。そして本作は映画に善悪も、現世と冥土の境目もないことまで暴いてしまった。なんて恐ろしい作品!
真魚八重子(映画ライター)

■観て良かった。思い入れとこだわり、粗雑さと勢いが見事にうねりあい、絡み合った、これぞ自主映画、という逸品でした。これはそこらの素人には作れない、でも単なるプロにも作れない。そのどうなるかわからない場所を通過した一回性、みたいなものが、あの映画の強さだと思いました。 塩田明彦(監督『害虫』『どろろ』)